自分の作品を自身の言葉によって説明することは、それ自体がある矛盾であると思っています。 それは、私自身が、言葉によってリアルに伝えられないもどかしさを絵具にたくして絵画という方法で表現していると云うことだと思います。
それでは絵画なら充分に伝わるか。と言えば、これも又、充分とは言えません。しかし、言葉では表現しずらいことを表現するという意味において、自分には絵画が一番自由なのだと思います。今の絵画スタイルも、理論的に考えてできた訳ではなく、毎日の自由な絵具遊びの中から悩み、苦しみ、発見し、それを楽しむ。そんなくり返しと偶然の積みかさねの中から自然に生まれてきたものです。
では私はいったい何を伝えたいのか?といいますと、それは、生命の根源である宇宙をも含めた自然と、その尊さ、広大さ、繊細さ、そして美しさであり、それらに出会った時の感動だと思います。したがって、色彩の選択も考えながら使っている訳ではなく、自然の四季の中で、自分の心の中に蓄積しているささやかな感動をそのまま色彩として呼吸するようにはき出しているものです。
私が今、暮らしている北海道という土地はとても美しい自然につつまれています。冬の真っ白い雪原に射し込む光。春の柔らかな光の中でいっせいに顔を出す草花達。夏のぬける様な空。色濃い緑の山々。秋の燃えるような紅葉と澄んだ空に広がる夕陽。そして又、真っ白い雪の世界へと戻ってゆきます。そんなくり返しの時間の中での私自身の心の反応の蓄積が、私の絵画なのだと思います。
自然はとても広大で、美しく繊細で、時としてとても厳しく、そして淡々と生と死をくり返します。 人間の肉体は自然そのものです。その事を心で受け入れながら、ゆっくりと生きてゆきたいと思っています。
1995.9.13
井上 まさじ
